もの・こと・じょう・ほう

見据えた海は大海原。耳を澄ませば人の声。振り向き様に富士の山。影の先に一輪の花。

水が戻る場所

もし、自分が、自分の親だったら。
我が子が東京に出て行って部屋が空になった状態をみて何を思うだろうか。
生まれてから22年。子どもの成長を見守ってきて、時に笑い、時に怒り、時に悲しみ。
いくつもの思い出があるこの部屋、この家から自分の子どもが存在するとはいえ、「ここ」にいなくなるということを
どう受け止めるのだろうか。


これがもし、亡くなってしまうということがあれば、何を思うだろうか。
亡くなった悲しみを思い出すのは、やはり子どもの部屋を眺めた時になるのかもしれない。
すべてがつまっていたこの部屋がガランとしてしまった。
物が消えるとともに記憶が消えていく。記録が消えていく。物に宿り、記された何かが消えていく。
それを思ったとき、涙が、悲しみの涙が口元へ流れてくるのかもしれない。


そんなことを、今、涙の味を感じながら書いている。午前3時。
涙は今、ここですべて。
涙で戻るはその記憶。しかと受け止めたり。