もの・こと・じょう・ほう

見据えた海は大海原。耳を澄ませば人の声。振り向き様に富士の山。影の先に一輪の花。

あと少し

日付変わって日曜日。
3月25日。30日に大阪を離れる。
研修先に行けば、改めて社会人という自覚が芽生えるのだろうけど、今のこの時はそうした自覚が芽生えるような気がしない。
自室のベッドで寝て、親が作ってくれるごはん。不自由のない部屋の広さ。雑然と置かれる書物。机。部屋の空気。
当然と思えている窓の外の景色。
あと数日でそれが変わってしまうことにその自覚が生まれてこない。
大阪が、家が、部屋が好きなのだろう。
横になってみあげた天井が落ち着くのだろう。
違うところへいくのはいやだと思っているのかもしれない無意識。
でも、新しい所で待ち受けている生活にも期待はしている。
新しく出会う同僚、上司。
新しい景色、部屋、天井。
兄やいとこ、叔父が東京にいるから何かあったら頼ることのできる肉親がいる。
ネットでも交流も別に今まで通りだ。
ただ、過去を一度締めくくって置いていくことへの何とも言えないこの気持ち。これが自覚への一歩なのだとしたら、とてもむごい。
むごいこの気持ちを乗り越えないといけない。あと数日。日増しに強くなるこのむごさを時間と共に歩んでいくこと。
いいじゃないか。死ぬわけじゃないんだし。
むごいことなんていくつも経験してきたじゃないか。
つらいことなんてたくさんあったじゃないか。
高校入学、大学入学の時だって少なからずこうした気持ちになったはずだ。
始まってみれば、次の同じむごさを感じるほどに多くの出会いと別れ、喜怒哀楽が待ち受けているさ。
出会いは時間と共にあらんことを。